技術経営(MOT)専門職大学院
技術と経営を一体化した幅広い場面で活躍
 
 
技術先進国といわれる我が国には、「技術は技術者がやり、経営は経営者がやる」と考える風潮がありました。
しかしこれでは企業の発展は行き詰まってしまいます。
これを打破して広い視野で捉えながら、技術と経営を一体化させて企業や国の発展を考えるのがMOT(技術経営)です。
今経済産業省や文部科学省を中心に総力を上げてMOT問題に取り組んでいます。


■これからの企業発展のカギとなるMOT(技術経営)

MOT(Management of Technology)は「技術経営」と訳されています。具体的には、技術と経営を熟知したビジネスパーソンが、技術に立脚した企業(メーカーなど)の持っている高度な技術、眠っている技術、新たに開発される技術を事業・経営に結びつけて企業を活性化させ、競争力を強化しようとする経営手法(マネジメント)のことです。

MBAがこれまでの経営領域のみをカバーするのに対して、工学版MBAともいわれるMOTは技術領域までをも視野に入れた経営手法で、技術革新・経営強化を図ろうとしている企業にとっては、その発展のカギになるものです。最近注目されている技術特許をはじめとする知的財産の保護・効率活用もMOTの領域の一つです。

1980年代までの我が国の技術は国際的に高い評価を受けてきましたが、90年代に入りその評価は低下して世界のトップグループから一歩後退しました。理由は、技術は高いがその技術を経営に反映させる経営手法が貧弱で、企業の発展に繋がらなかったからです。近年のITやロボット、バイオ、ナノテクノロジーなどの急速な技術革新・市場変化に対応できる人材が不足していたからといってもよいでしょう。

この反省から、経済産業省を中心に技術と経営に精通したMOT人材の育成が本格化して、大学院においてもMOTプログラムを導入するところが増えました。MOTは一企業のみならず我が国経済の活性化にも繋がる重要なマネジメントといえるでしょう。


■技術から経営まで広範な履修内容で、キャリアアップを支援

技術経営を学べる大学院では、経営者(事務職など技術者以外の人々)は技術に、技術者は経営に視点を置いて学び、その内容は両分野をカバーしながら知識・スキルを習得する学際色の濃いものです。

MOTプログラムは文系(経済学や経営学)大学院と工学系大学院で開講されていて、経営者・技術者の壁はなく、希望者はどちらでも履修できます。現在の大学院でいえば、前者は専門職学位(技術経営修士<専門職>)取得の先駆けとなった専門職大学院(ビジネススクール)の早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻であり、後者は芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科です。

カリキュラムの例としては「先端技術政策とマネジメント」「グローバル・テクノロジー・マネジメント」「生産経営システム設計」「IT戦略マネジメント」「知識経営マネジメント」(以上早稲田大学大学院)、「経営戦略の核としての技術戦略」「技術開発によるイノベーションと新規事業創出」「テクノロジーの資質、技術人材の育成」(以上芝浦工業大学大学院)などがあり、両者とも技術と経営に通じた内容になっています。

MOTの性格上、履修内容は極めて広範な分野にわたりますが、大学院修了時には確実にキャリアアップしており、将来的にCTO(最高技術責任者)はもとよりCEO(最高経営責任者)などトップへの道も夢ではありません。


■MOT教育が本格化して、年間4,000人の人材を輩出

MBAと同じくMOTもアメリカで誕生しました。そのきっかけとなったのは宇宙開発で得た新しい技術の活用といわれています。NASA(アメリカ航空宇宙局)はその技術マネジメント研究をマサチューセッツ工科大学に依頼。1980年代初頭には大学院生向けのMOTプログラムが完成しました。今では150を超す大学院(大学を含む)にMOTコースがあり、年間10,000人以上のMOT人材が誕生しているといわれています。

我が国では90年代半ばになってから注目され始めました。それは高い技術力を持ちながらそれが企業経営に結びつかなかったことや、世界的にも高水準の研究開発費を投資して新技術を開発しながらイノベーションを起こすにいたらなかったケースが多くあり、経済活動に悪影響を与えたからです。

このため通商産業省(当時)はMOT人材の育成が急務として、さまざまな方策を施しました。一般の大学院や専門職大学院でMOTプログラムを学べるのもその一環です。一般財団法人日本生涯学習総合研究所の調べでは、現在、MOTプログラムが学べる大学院はおよそ50校(そのうち10校が専門職大学院)あり、経済産業省によると年間4,000人のMOT人材を輩出するレベルになったそうです。また同省は平成18年8月に「MOT教育ガイド」を発表しました。これを大学院などで実施しているMOT教育の評価や企業での人材育成プログラム策定など、今後のMOTの進展に活用してもらおうというものです。



■大学院選定のポイントは、志望校の特色をつかむこと

1.文系(経済・経営)大学院のコースか、工学系大学院のコースで選定する
両者で同じようなプログラムが学べるといっても、文系大学院は経営をベースにしたもの、工学系大学院は技術を根幹においた内容になっています。また現在は工学系大学院が多く、院生も技術者が多いのが実状です。これらの点を考慮して選定するとよいでしょう。

2.履修したい分野や将来の方向を考える
大学院にはそれぞれ得意分野や力を入れている分野があります。どの大学院もオールラウンドなMOTを身につけることができますが、IT、新素材、ロボット、バイオ、ナノテクノロジーなどの細分化した専門分野のマネジメントに力を入れている大学院を考える必要があります。
また、将来の方向を考えて大学院を選ぶことも重要です。たとえば将来的に、現在勤めている企業の「新商品開発・新事業開発・経営戦略立案などがしたい」とか、「身につけている技術で起業したい」などの自身の方向によって大学院選定が異なることがあるからです。

3.修業年限や授業形態をチェックする
大学院修士課程の修業年限は原則として2年です。しかし1年で修了できる大学院もあります。ただしこの場合の授業はハードです。また勤めながら学ぶ社会人を考慮して平日夜間や土曜(日曜)に開講している大学院もあります。この場合の修業年限は2年です。自身の条件を考えてチェックしてください。

4.社会人に配慮した入試制度を確認する
技術経営専門職大学院(ビジネススクール)の入学者は主に社会人ですから、入試は社会人が対応できるものとなっています。また一般の大学院では入試科目の英語を免除するとか、研究計画書などの提出書類と面接だけで合否を判定するなど、社会人の負担を軽減する配慮がなされています。受験勉強が相当楽になりますからどんな軽減措置かを確認しておくとよいでしょう。

5.キャンパスの所在地や授業料・奨学金等を知る
本校以外にサテライト・キャンパスを設けて通学の便宜を図っている大学院が増えてきました。他の条件が合致するならそのキャンパスも志望校の一つにしておきましょう。
大学院の入学金や授業料は相当な金額にのぼります。このため各大学院は校内・外の奨学金を充実させています。さらに厚生労働省の教育訓練給付金制度の適用を受けているところもありますので、事前にその内容を知っておくとよいでしょう。